2016年09月09日

コンペ受賞

赤井都さんが、Miniature Book Competition 2016において『月夜のまひる』で受賞しました。
2006、2007年に続く9年ぶり3度目の受賞となります。
ミニチュアブックソサエティ(本拠地アメリカ)は
豆本の面白さを追及し情報交換するため1983年に設立されたNPOで
会員はアメリカ、カナダ、スペイン、フランス、オランダ、日本などにいます。
毎年、国際的な豆本コンペティションを開催しています。
http://www.mbs.org/

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ミニチュアブックソサエティ展示2016優秀賞
赤井都『月夜のまひる』

審査評
『月夜のまひる』は手すき和紙、活版、そしてデジタルプリントを組み込んでいて、三つに折り畳まれた多色グラデーション活版印刷のページを含む、詳細な挿絵も取り入れている。32ページという長さでありながら、本がすらっとエレガントなのは、赤井の素材選択ときれいに整えられた構造の賜物だ。ここに、文章と絵が驚くべき方法で相互作用している。描画がページの縁に迫り、本ののどにまたがり、また文章の両脇に平行に落ちている。けれども単色による優美な線画で、よく考えられた配列は、バランス感覚とリズムをもたらす。


赤井都
http://kototsubo.com/


(編集室)

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2015年05月10日

エストニア製本展レポート

International Exhibition of Artistic Bookbinding “Scripta manent V”
カンファレンスと展覧会オープニングに参加して


中野裕子


2015年2月10日20時20分。成田を出てから約15時間後、ようやく私はエストニア共和国(以下「エストニア」と省略)のタリン空港に到着しました。The Estonian Association of Designer Boookbinders(以下「EADB」と省略)が開催するInternational Exhibition of Artistic Bookbinding “Scripta manent V”のカンファレンスと展覧会オープニングに参加するために来たのです。5年毎に開かれ今回が5回目となるこの展覧会は、私にとって記念すべき国際展への初参加となりました。
展覧会用のテキストは参加希望者全員に共通のものが支給され、各自ルリユールします。アイボリー色の優しい紙に印刷されたそのタイトルは『Names, Words, Witch’s Symbols 4×(4+4)×4=Young Estonian Poetry』、エストニアの若い8人の詩人によって書かれた詩でした。

エントリー以前、恥ずかしながら私は、エストニアについて無知だったため、制作の糸口をつかもうと調べました。
エストニアは、ラトビア、リトアニアと共にバルト三国の一つであり、フィンランドのヘルシンキから飛行機で約30分、高速船でも約1時間半という立地にあること。面積は約45000㎢(北海道の約55%)、人口は約130万人、公用語はエストニア語、EUの加盟国であること。Skypeが誕生した国であり、IT産業が盛んである一方、中世の面影を残した旧市街や自然環境を大切にしている国であることがわかりました。

長時間のフライト、時差、慌ただしかった準備、初めての一人海外旅行の不安もあって、軽い疲労を感じながら出口へ向かうと、二人の女性が笑顔で迎えてくれました。「Welcome to Estonia!」その言葉は私を温かく包み、疲れを溶かすようでした。数回のメールのやり取りで、私の稚拙な英語表現からよほど頼りなげに感じられたのでしょう。EADBのSirje Kriisaさん達が空港からホテルまで車での送迎を申し出てくれたのです。「おもてなし」で有名な日本でも考えらない程の親切さに深く感謝し、翌日に国立図書館で会う約束をして別れました。



11日、待ち合わせをした国立図書館へ。ここは明日開かれるカンファレンスの会場でもあります。たまたまホールでエストニアのベストデザイン本賞の展示をしていたため、早めに到着した私は待ち時間に鑑賞しました。
その後、kriisaさんの案内でKUMU美術館へ向かいました。この美術館ではエストニアの近現代美術を展示しています。常設展では美しく見事な作品ばかりでなく、他国に支配されていた歴史的背景が感じられる作品にも出会えました。企画展ではエストニアの美術工芸学校教育100年展を見ることができました。エストニア工芸品の技術の高さが裏付けられた教育内容に納得して、美術館を後にしました。



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12日、10時から国立図書館でカンファレンスが始まりました。受付で参加者全員115冊の作品が掲載されたカタログと共に、本の形をした小さなブローチを頂き、かわいい心遣いに胸がキュンとなりました。
挨拶の後、ヨーロッパ各国から集まった7人のそうそうたるメンバーによるスピーチが始まりました。「Fine bookbinding today, techniques and materials」、「How to bind the book of nature」など興味深いタイトルばかりでしたが、残念ながら私の語学力ではほとんど理解できませんでした。わずかに聞き取れた単語や数々の映像から、各国の製本状況や精緻な技術がうかがわれました。

全てのスピーチが終わり、私達は展示会場のEstonian Museum of Applied Art and Designへ移動しました。17時より展覧会オープニングが始まりました。落ち着いた空間にディスプレイケースの照明が白く光っており、その中に羽を広げた蝶のように美しい本が並んでいます。参加者全員の作品が一堂に展示された様子は圧巻でした。日本からは7名の参加者がおり、ルリユール界にその存在感を示したのではないでしょうか。
優れた作品には「Premium」称号が与えられ、その中でもさらに素晴らしい3点が「Golden Book Award」に選ばれました。また学生カテゴリーでは1点が「Best Student’s Award」に選ばれました。中身が同じ物とは思えない多彩な姿に感嘆し、個性的な綴じ方やユニークな素材使いに驚愕しました。私は森の中で蝶を追いかける少年のように人混みをかき分けて、ディスプレーからディスプレーへ夢中で本を観察しました。
挨拶や授賞式が一通り終わると、ワインを片手に、自由に展示を見て談笑したり、写真を撮ったり、フランクで和やかな雰囲気を楽しみました。

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どうしてこの小さな国でこのような組織が生まれ、運営を維持できるのだろうと不思議に思っていました。そして、国立図書館では自国のベストデザイン本賞が展示されており、誰でも気軽に立ち寄って鑑賞していました。ここに来て、その答えがわかったような気がします。エストニアはskypeの国、自由で誰とでも繋がる国なのです。かつて歌で自由を訴えた、賢く熱い人々の国なのです。そしてそれはルリユールに関しても同じ事が言えるのでしょう。バラバラの一枚の紙でしかないものを綴じ合わせると立体の本が立ち現れる、という魔法。これは人と人との繋がりにも似ているのではないでしょうか?
ルリユールという共通点で、私はこの展覧会で出会った人達と繋がったのです。本のように目には見えないけれど、温かい何かがそこに生まれました。国や言葉の違いも気にならない程にすんなりと、EADBの精神と情熱は私の心に伝わってきました。彼等の活動を見習い、本という文化を通じて、人と人とを繋げていきたい ─ EADBの皆様に感謝の気持ちと共に、私の思いを届けたいと思います。



(なかのひろこ)

詳細や受賞作品写真は、以下のサイトでご覧いただけます
http://www.scriptamanent.ee/indexE.html
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2014年08月19日

ポルトガル「ビーチの図書館」

BIBLIOTECA DE PRAIA ――「ビーチの図書館」
赤井都

ポルトガルで、思いがけないところに本がある美しい読書風景に出会ったのでお知らせしたい。

ポルトガルは、イベリア半島の大西洋側に位置し、スペインと国境を接する。かつて大航海時代の先駆者であったが、現在EU加盟国の中でのGDPは下位で、日本の埼玉県よりやや大きい規模である。主要産業は、地中海性気候を生かした農業、水産業、食品・繊維業、観光。2003年の推計によれば、15歳以上の国民の識字率は93.3%とヨーロッパ諸国の中では低い。
しかし、こうした統計数値には反映されないような生活の余裕が感じられた。私が今夏2週間訪れた印象では、町に本屋が多く、飛行機の中で「紙の本」を読んでいる人がずいぶん多い。だいたいは大判のペーパーバックで、持ち歩いているはずなのに扱いが丁寧なのか表紙は真新しい雰囲気で、中はひたすら字ばかりの本。リスボンのトラムで乗り合わせたスーツ姿の若い男性が小脇に抱えていたのはピカピカの『ロビンソン・クルーソー』だった。
さて、大西洋に面する漁村ナザレは、首都リスボンから約100km北にあり、夏は観光客があふれるビーチリゾートの町になる。人で賑わうビーチの中心地、教会広場から浜辺に降りたすぐの好立地に、小さな小屋がある(写真1)。

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閉まっていると単なる休憩スペースのようだ。ところが9時から19時までの間、小屋の中の扉がぱたんと外側に開くと、書架が現れ、ウッドデッキには子供サイズの小さなプラスチックのテーブルと椅子が並べられる。ここは「ビーチの図書館」。7月と8月だけオープンする、ナザレ市による公共無料図書館の出張所だ。子供たちが群がっているのは、ウノなどのカードゲームを借りるため。子供用だけでなく大人用の本も揃え、気軽に何でも聞けそうな明るい笑顔の司書さんが迎えてくれる(写真2)。

2.jpg 写真2

この出張所の蔵書は約200冊、旅行者でも誰でも、貸出帳にサインして5日間2冊借り出せる。そうして借りた本は、ビーチででも、コーヒーショップででも、どこででも読める。蔵書の内容は、文学、自然、歴史などで、よりポルトガルを知ってもらう目的で、ナザレについての本は特に充実させている。英語、フランス語、ポルトガル語の本がある。観光国ポルトガルは現在ビーチならどこでも、こうした「ビーチの図書館」を開いていて、ナザレはその中でも一番最初に開設されたものだ。禁止事項は、食べながら読むこと、本を濡らすこと、テーブルに腰掛けること。朝に通りかかると、絵本の読み聞かせ会が開かれていた。絵を描くこともある。これらは司書さんへの突撃インタビューで明らかになった。一日の平均利用者数は、う〜ん100人くらいかなということだった。ちなみに図書館本館は、バスターミナルの隣にある立派な建物だ。ちらりと覗くと、エントランスから続くギャラリースペースには、伝統的な形の船のほか、海岸で拾ったガラスで形作った塔など、子供の手によるようなアートが飾られていた。
ビーチでは泳いでいる人よりも、ビーチで過ごすことが目的であるような人が多い。一週間から一ヵ月単位で逗留して夏を楽しむ。その中でビーチで本を読んでいる人は多い。人がいる場所に、本がある。本が、人がいる場所の方へ出ていく。それは本の利用のために有効だ。とても単純なことなのだけれど有効なことだと感じた。

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ナザレ市立図書館HP:http://bmn.nazaredns.com/
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2011年08月10日

カリフォルニア通信

アメリカの製本家たち
中沢尚子

真夏のサンタクルス(サンフランシスコの南 約130キロ)は週末ともなると大勢の観光客で賑わいます。モントレー湾に面したこの街は平均16度から25度の気温を保って、たいへん過ごしやすく、ジャズ、芝居、各種展覧会など退屈しない街です。そのせいか、人口25万人にも膨れ上がったようです。因みに、沢山のアーテイストが住んでいます。
この街のダウンタウンにちょっと風変わりなアート画廊があって、2人展を開催していました。
“White Balance” というテーマでミックス メディアのアート展です。一見、製本には関係のないような感じですが、作家のひとりで、友人のJody AlexanderはブックアーテイストとしてGuild of Bookworkers の会員でもあり、多方面で活躍しています。 

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今回はそのJodyと彼女の作品を紹介しましょう。
Jody Alexanderはreference librarianとして、図書館で働いています。多岐にわたるいろいろな知識を要求される職業です。彼女が製本にのめり込むきっかけはこのあたりからなのでしょう。最近は大学のアートクラスでブックアートを教えているそうです。多才な彼女は、展覧会のための作品作りにも余念なく、忙しく活躍している作家です。

会場に入ると、白を基調にした作品、10数点が、白い壁に沿って展示されています。
古びた洗面台と薬のキャビネットの作品は・・・
古くひび割れた陶製の洗面台の中には廃棄された本のページが、小さく丸められ、投げ込まれています。また、洗面台の上部の薬のキャビネットの中にはカバーのない本が断裁、接着され、びっしり埋め込まれています。 

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真っ白い本に赤い糸でかがられた作品では・・・
白塗りの棚の上に8冊の本が無造作に立てかけ、どれもカバーはなく、ページは縦横に赤い糸でかがられ、縫い終わりは切り揃えないまま、だらりと下がっているのも特徴でしょう。 

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廃棄された陶製の洗面台、薬のキャビネット、廃棄された本、これらを利用して、アートとして蘇らせ、現代の物あまりの社会に片隅から抵抗しているように思えます。
これらの作品は一般的な製本の概念からは遠く離れてはいますが、従来のブックデザインが表面的で、平面的なものであるならば、ブックアートはルールがなく、自由にデザインに凝ることができ、より一層立体的で、形態のみならず、思考さえも綴り込むことが可能なように思えます。
製本技術も時代と共に変化してきたように、デジタル化が進められている昨今、現在読まれている本の形態そのものが無くなる日が将来おとずれるとすれば、形は変わったとしてもアートとして存在し続けることができるなら、それもよいのではないかと思うようになりました。Jody の作品を見て、同じことを考えている作家に出会った気がしました。

(なかざわ ひさこ 修復、装本家)

  
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2011年07月19日

被災資料復旧活動情報

岩手県大船渡市在住の紙本保存修復士である金野聡子さん(東京製本倶楽部会員)を中心としたグループによる被災資料の復旧活動が、日本経済新聞に掲載されました。

リンク 「身近な道具で紙を修復」 日経2011/7/18


東日本大震災の被害を受けた写真やアルバム、書籍・文書などの救済・修復作業を、震災直後から続けておられます。
これまでの活動については、各所で紹介されています
(過去の記事 大船渡発 会員通信 震災被害の復旧活動/会員近況報告)。



東京では、被災資料復旧支援ためのボランティア組織「東京文書救援隊」も活動しており、こちらのブログでも金野さんの活動が紹介されています。

東京文書救援隊 ブログ
http://toubunq.blogspot.com/


(編集室)
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