紙つなげ! 彼らが本の紙を造っている
再生・日本製紙石巻工場
佐々涼子 著 早川書房 2014
3年前の3月、紙が足りないと騒がれていたことを覚えていますか?東日本大震災で、日本の出版用紙の約4割を担う日本製紙の主力工場である石巻工場が壊滅的被害にあったのがその理由でした。本書は、その日本製紙石巻工場の再生までの道のりを描いたドキュメンタリーです。
話は地震当日と直後の混乱した状況、誰もが「工場は死んだ」と思ったという工場の被害状況に始まります。そして読んでいる今でさえ無謀と思える「半年復興」に向けてそれぞれの持ち場で黙々と働いた従業員の姿が描かれ、工場再生の象徴となる8号抄紙機の初稼働へとつながります。語られた従業員の言葉からは、直面した困難や苦悩、さまざまな葛藤や悔しさなどが滲み出ます。そして同時に、自分たちが本の紙を造っている、日本の出版界を支えている、という職人としての矜持が感じられます。
本への関心が高い倶楽部会員の皆さんの中でも、それほど多くの紙が石巻で作られていることを震災で初めて知った方も多いのではないでしょうか?恥ずかしながら私もその一人です。もっと言えば、毎日本を手にしていながら、本の紙がどこで作られているかを考えてみたことすらありませんでした。だからこそ、この再生の物語は読んでおきたいと思いました。
本書に使用された紙はすべて石巻工場で作られたもので、巻末には使用された紙が記載されています。また、当面は電子化の予定は無いそうです。ぜひ、石巻工場8号抄紙機で作られた本文用紙の手触りを感じ、その紙に関わった土地や人々に思いを馳せつつお読み下さい。石巻で職人達によって「つなげ」られた紙への思いは、きっと読者の手や心にもつながっていると感じられることでしょう。
なお、本書の売上の3%は、石巻市の小学校の図書購入費として寄付されるとのことです。
(佐藤)
2014年08月19日
2014年03月18日
BOOKS
BOOKS
貴田 庄『西洋の書物工房』

朝日新聞出版、2014年2月、四六判ソフトカバー、243頁+15頁、1400円+税
2000年に芳賀書店から出版されたが、「あとがき」によれば初版800部、増刷350部が刊行されたのみで絶版となった。最近では古書価が出版時の定価の3倍ほどになっていたと聞く。入手しにくかった本が朝日選書の一冊として装い新たに出版された。西洋の製本について歴史的、理論的にきちんと解説した日本で最初の本である。著者は映画関係の著述で知られているが、1970年代末にパリとブリュッセルで本格的にルリユールを学んで帰国した。マーブル紙作家としても知られている。実際に手を動かして制作する作家らしく製本をモノとしてとらえる視点は現在でもとても参考になる。本を構成している紙や革、金箔、などの材料の歴史や特性を詳しく解説し、小口装飾やはなぎれ、見返しなどについての論考は読んでいて実に楽しい。豊富な写真と図版が読む人を飽きさせない。旧版はB5の大きな本でゆったりとした組版で読みやすかったが持ち運びには不便だった。今回は四六判と小さくなったがあまり窮屈さを感じない。むしろ、どこにでも持ち運びしやすく、片手でページを繰る事が出来て、気軽に読めるのは大歓迎である。製本についてもっと深く知ることの出来る一冊である。電子版もある。
ランバロス・ジャー 市川恵里 訳『水の生きもの』

河出書房新社、2013年10月、B4変形(235×370ミリ)
ハードカバー、化粧函入り、28ページ、シリアル・ナンバー入り、3990円+税
とてもうつくしい本である。インド東部ビハール州に伝わるという民族絵画の一種ミティーラ画の絵本。まず大きさにびっくりする。函から出すと横長の本だが表紙とページを上方向にめくる。表紙見返しの色と線の鮮やかさが普通じゃない。そっと触るとインクの凹凸を指の下に感じる。そして絵本のページはインドの手漉き紙にインドのシルクスクリーン工房で作られたオリジナル版画である。手漉き紙と印刷インクの匂いが鼻を刺激する。しかし絵を構成する線の鮮やかさは、オフセット印刷では出すことのできないオリジナル版画ならではのものである。そして製本が手製本なのである。よく見返しのノドのあたりをみつめると、2か所で3つ目綴じしてあるのが分かる。3000部刊行のシリアルナンバー入り。同じシリーズの『夜の木』(タムラ堂刊)の制作工程を捉えた動画がある。http://www.youtube.com/watch?v=om6i3enGZ8c
(以上2点、岡本)

朝日新聞出版、2014年2月、四六判ソフトカバー、243頁+15頁、1400円+税
2000年に芳賀書店から出版されたが、「あとがき」によれば初版800部、増刷350部が刊行されたのみで絶版となった。最近では古書価が出版時の定価の3倍ほどになっていたと聞く。入手しにくかった本が朝日選書の一冊として装い新たに出版された。西洋の製本について歴史的、理論的にきちんと解説した日本で最初の本である。著者は映画関係の著述で知られているが、1970年代末にパリとブリュッセルで本格的にルリユールを学んで帰国した。マーブル紙作家としても知られている。実際に手を動かして制作する作家らしく製本をモノとしてとらえる視点は現在でもとても参考になる。本を構成している紙や革、金箔、などの材料の歴史や特性を詳しく解説し、小口装飾やはなぎれ、見返しなどについての論考は読んでいて実に楽しい。豊富な写真と図版が読む人を飽きさせない。旧版はB5の大きな本でゆったりとした組版で読みやすかったが持ち運びには不便だった。今回は四六判と小さくなったがあまり窮屈さを感じない。むしろ、どこにでも持ち運びしやすく、片手でページを繰る事が出来て、気軽に読めるのは大歓迎である。製本についてもっと深く知ることの出来る一冊である。電子版もある。
ランバロス・ジャー 市川恵里 訳『水の生きもの』

河出書房新社、2013年10月、B4変形(235×370ミリ)
ハードカバー、化粧函入り、28ページ、シリアル・ナンバー入り、3990円+税
とてもうつくしい本である。インド東部ビハール州に伝わるという民族絵画の一種ミティーラ画の絵本。まず大きさにびっくりする。函から出すと横長の本だが表紙とページを上方向にめくる。表紙見返しの色と線の鮮やかさが普通じゃない。そっと触るとインクの凹凸を指の下に感じる。そして絵本のページはインドの手漉き紙にインドのシルクスクリーン工房で作られたオリジナル版画である。手漉き紙と印刷インクの匂いが鼻を刺激する。しかし絵を構成する線の鮮やかさは、オフセット印刷では出すことのできないオリジナル版画ならではのものである。そして製本が手製本なのである。よく見返しのノドのあたりをみつめると、2か所で3つ目綴じしてあるのが分かる。3000部刊行のシリアルナンバー入り。同じシリーズの『夜の木』(タムラ堂刊)の制作工程を捉えた動画がある。http://www.youtube.com/watch?v=om6i3enGZ8c
(以上2点、岡本)
2013年12月02日
新刊情報
『楽しい豆本の作りかた』

ブックサイズ 天地210×左右200×厚さ10mm
著者 赤井都 http://kototsubo.com/
発行 学研パブリッシング http://gakken-publishing.co.jp/
2013.11.26発売
本文80ページ オールカラー
ISBN 978-4058001677
本体価格 1,600 円
初心者から経験者まで、新しい発見がある本。
子どもから大人まで、心ときめく…
自由な発想で作れる「豆本」の魅力がこの一冊に!
中綴じ、折本、平綴じなど、製本ごとに8作品掲載。
外装の作り方だけでなく、内容の決め方も丁寧に解説。
作品の完成度が高まる「函」のつくり方も登場!
(赤井都)

ブックサイズ 天地210×左右200×厚さ10mm
著者 赤井都 http://kototsubo.com/
発行 学研パブリッシング http://gakken-publishing.co.jp/
2013.11.26発売
本文80ページ オールカラー
ISBN 978-4058001677
本体価格 1,600 円
初心者から経験者まで、新しい発見がある本。
子どもから大人まで、心ときめく…
自由な発想で作れる「豆本」の魅力がこの一冊に!
中綴じ、折本、平綴じなど、製本ごとに8作品掲載。
外装の作り方だけでなく、内容の決め方も丁寧に解説。
作品の完成度が高まる「函」のつくり方も登場!
(赤井都)