2014年08月19日

ポルトガル「ビーチの図書館」

BIBLIOTECA DE PRAIA ――「ビーチの図書館」
赤井都

ポルトガルで、思いがけないところに本がある美しい読書風景に出会ったのでお知らせしたい。

ポルトガルは、イベリア半島の大西洋側に位置し、スペインと国境を接する。かつて大航海時代の先駆者であったが、現在EU加盟国の中でのGDPは下位で、日本の埼玉県よりやや大きい規模である。主要産業は、地中海性気候を生かした農業、水産業、食品・繊維業、観光。2003年の推計によれば、15歳以上の国民の識字率は93.3%とヨーロッパ諸国の中では低い。
しかし、こうした統計数値には反映されないような生活の余裕が感じられた。私が今夏2週間訪れた印象では、町に本屋が多く、飛行機の中で「紙の本」を読んでいる人がずいぶん多い。だいたいは大判のペーパーバックで、持ち歩いているはずなのに扱いが丁寧なのか表紙は真新しい雰囲気で、中はひたすら字ばかりの本。リスボンのトラムで乗り合わせたスーツ姿の若い男性が小脇に抱えていたのはピカピカの『ロビンソン・クルーソー』だった。
さて、大西洋に面する漁村ナザレは、首都リスボンから約100km北にあり、夏は観光客があふれるビーチリゾートの町になる。人で賑わうビーチの中心地、教会広場から浜辺に降りたすぐの好立地に、小さな小屋がある(写真1)。

1.jpg 写真1

閉まっていると単なる休憩スペースのようだ。ところが9時から19時までの間、小屋の中の扉がぱたんと外側に開くと、書架が現れ、ウッドデッキには子供サイズの小さなプラスチックのテーブルと椅子が並べられる。ここは「ビーチの図書館」。7月と8月だけオープンする、ナザレ市による公共無料図書館の出張所だ。子供たちが群がっているのは、ウノなどのカードゲームを借りるため。子供用だけでなく大人用の本も揃え、気軽に何でも聞けそうな明るい笑顔の司書さんが迎えてくれる(写真2)。

2.jpg 写真2

この出張所の蔵書は約200冊、旅行者でも誰でも、貸出帳にサインして5日間2冊借り出せる。そうして借りた本は、ビーチででも、コーヒーショップででも、どこででも読める。蔵書の内容は、文学、自然、歴史などで、よりポルトガルを知ってもらう目的で、ナザレについての本は特に充実させている。英語、フランス語、ポルトガル語の本がある。観光国ポルトガルは現在ビーチならどこでも、こうした「ビーチの図書館」を開いていて、ナザレはその中でも一番最初に開設されたものだ。禁止事項は、食べながら読むこと、本を濡らすこと、テーブルに腰掛けること。朝に通りかかると、絵本の読み聞かせ会が開かれていた。絵を描くこともある。これらは司書さんへの突撃インタビューで明らかになった。一日の平均利用者数は、う〜ん100人くらいかなということだった。ちなみに図書館本館は、バスターミナルの隣にある立派な建物だ。ちらりと覗くと、エントランスから続くギャラリースペースには、伝統的な形の船のほか、海岸で拾ったガラスで形作った塔など、子供の手によるようなアートが飾られていた。
ビーチでは泳いでいる人よりも、ビーチで過ごすことが目的であるような人が多い。一週間から一ヵ月単位で逗留して夏を楽しむ。その中でビーチで本を読んでいる人は多い。人がいる場所に、本がある。本が、人がいる場所の方へ出ていく。それは本の利用のために有効だ。とても単純なことなのだけれど有効なことだと感じた。

3.jpg

ナザレ市立図書館HP:http://bmn.nazaredns.com/
posted by 東京製本倶楽部 at 19:11| Comment(0) | TrackBack(0) | 会員通信 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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