2011年08月10日

カリフォルニア通信

アメリカの製本家たち
中沢尚子

真夏のサンタクルス(サンフランシスコの南 約130キロ)は週末ともなると大勢の観光客で賑わいます。モントレー湾に面したこの街は平均16度から25度の気温を保って、たいへん過ごしやすく、ジャズ、芝居、各種展覧会など退屈しない街です。そのせいか、人口25万人にも膨れ上がったようです。因みに、沢山のアーテイストが住んでいます。
この街のダウンタウンにちょっと風変わりなアート画廊があって、2人展を開催していました。
“White Balance” というテーマでミックス メディアのアート展です。一見、製本には関係のないような感じですが、作家のひとりで、友人のJody AlexanderはブックアーテイストとしてGuild of Bookworkers の会員でもあり、多方面で活躍しています。 

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今回はそのJodyと彼女の作品を紹介しましょう。
Jody Alexanderはreference librarianとして、図書館で働いています。多岐にわたるいろいろな知識を要求される職業です。彼女が製本にのめり込むきっかけはこのあたりからなのでしょう。最近は大学のアートクラスでブックアートを教えているそうです。多才な彼女は、展覧会のための作品作りにも余念なく、忙しく活躍している作家です。

会場に入ると、白を基調にした作品、10数点が、白い壁に沿って展示されています。
古びた洗面台と薬のキャビネットの作品は・・・
古くひび割れた陶製の洗面台の中には廃棄された本のページが、小さく丸められ、投げ込まれています。また、洗面台の上部の薬のキャビネットの中にはカバーのない本が断裁、接着され、びっしり埋め込まれています。 

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真っ白い本に赤い糸でかがられた作品では・・・
白塗りの棚の上に8冊の本が無造作に立てかけ、どれもカバーはなく、ページは縦横に赤い糸でかがられ、縫い終わりは切り揃えないまま、だらりと下がっているのも特徴でしょう。 

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廃棄された陶製の洗面台、薬のキャビネット、廃棄された本、これらを利用して、アートとして蘇らせ、現代の物あまりの社会に片隅から抵抗しているように思えます。
これらの作品は一般的な製本の概念からは遠く離れてはいますが、従来のブックデザインが表面的で、平面的なものであるならば、ブックアートはルールがなく、自由にデザインに凝ることができ、より一層立体的で、形態のみならず、思考さえも綴り込むことが可能なように思えます。
製本技術も時代と共に変化してきたように、デジタル化が進められている昨今、現在読まれている本の形態そのものが無くなる日が将来おとずれるとすれば、形は変わったとしてもアートとして存在し続けることができるなら、それもよいのではないかと思うようになりました。Jody の作品を見て、同じことを考えている作家に出会った気がしました。

(なかざわ ひさこ 修復、装本家)

  
posted by 東京製本倶楽部 at 13:31| Comment(0) | TrackBack(0) | 会員通信 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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